銀行業界におけるBPO: 戦略とトレンドの検証
Abstract
銀行業界では、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)に対する関心が高まってますが、その市場はいまだ揺籃期にあります。セレントの推計では北米銀行が2005年に費やすBPO費用は推計46億米ドル(約4,900億円)に達し、その後2007年には79億米ドル(約8,400億円)に拡大する見通しです。
利益率の低下、業界再編、グローバル競争の激化に伴う市場低迷を背景に、銀行は営業コストの削減を強く迫られています。業務の効率化をより強力に推し進めるため、各行は競争力の差別化要因となるプロセスとアウトソースが可能なプロセスの選別に取り組んでいます。
米国ではトップ50の銀行すべてがBPOの導入を前向きに検討しています。但し、検討段階から実際の導入へと大きく一歩踏み出したのは一部のトップティア銀行に限られています。また、英国をはじめ欧州でも多くの銀行が積極的にBPOプロジェクトを展開していますが、こちらでは米銀とは対照的に、決済などバーティカルプロセスのアウトソーシングを目指す傾向が強く見られます。
セレントの最新レポート「銀行業界におけるBPO:戦略とトレンドの検証」は、銀行によるBPO導入を促す主な要因を検証し、現在外部委託されているビジネス・プロセスのタイプを明らかにしています。また、新たに市場に登場した革新的なBPOのモデル2例を紹介しています。まず、コモディティ化された決済サービスプロセスの利用例で、そのケーススタディを提供しています。もう1例は、銀行自体がアウトソーシングサービスを提供する側になり新たな収益を生み出す例で、ここでは既存のスケール・メリットやスキルの活用方法に焦点を当てています。
セレントのシニアアナリストで今回レポートを執筆したマダビ・マンサは次のように述べています。「BPOを成功に導く万能の策というものはありません。銀行の規模、業務地域、競争環境、社内カルチャーといった要因によって、選択するアプローチは異なるはずです。銀行の競争力を決定付けるようなプロセスや関連インフラをアウトソーシングする場合には、リスクを伴います。一方、競争力の重要基盤ではないプロセスや関連インフラは、アウトソーシングの検討対象とすべきでしょう。」
各行は、バンキングのバリューチェーンの中で自行の市場競争力の源泉となる要素を見極め、これに応じてアウトソーシングのディシジョンをしています。たとえば、高収益が見込まれる顧客関係を確保するために営業・マーケティングが最重要プロセスであると判断した銀行は、商品開発や決済処理業務をサードパーティに外部委託する方針を示しています。また一方、すでに必要なスケール・メリットやスキルを獲得している銀行は、アウトソースではなく余剰能力を利用して他の銀行にサービスを提供する業務のインソースを選択しています。
また、一部の銀行はコ・ソーシング(co-sourcing)戦略を検討しています。この戦略は極めて重要でありながらコモディティ化が進んでいるプロセスを中心に、ビジネス・プロセスを共用することで他行と連携してスケール・メリット拡大を目指すものです。このようにソーシング戦略の選択肢はたようですが、その選択にかかわらず、各銀行はサードパーティのアウトソーシングプロバイダーとの提携を通じてシステム上のノウハウを生かし、プロセスの改善や持続的なコスト削減の実現を図っています。